「ミナコとヨシキの彼氏事情」 中島清志 作    〔キャスト〕♀西山美女子(にしやまみなこ)・・・25歳。OL。       ♀川村良樹(かわむらよしき)・・・・24歳。大学院生。      ある晴れた秋の日の朝。      川村良樹は人を待っている。      かなり待たされているようで、イライラと落ち着かない様子。      そこに西山美女子が現れる。      手に持っていた紙袋を置くと、両手を広げて      ミナコ「キャー!     ヨシキ、お久しぶりー。」 ヨシキ「ミナコ!」      見つめ合う2人。 ミナコ「会いたかったよ。」 ヨシキ「私も。」      ミナコ「来てくれたんだね。」 ヨシキ「当たり前じゃない。」      固く抱きしめ合う2人。      キスはしなくても良い。      してもいいけど。     ミナコ「さびしかった?」 ヨシキ「さびしかったよ。」 ミナコ「うそつき。」 ヨシキ「うそじゃないよ。」 ミナコ「だってさ・・・」      ミナコ少し離れて、すねている。 ヨシキ「いつまでもラブラブじゃいられないよ。」 ミナコ「わかってる。     言ってみただけだよーん。」 ヨシキ「もう、ミナコったら・・・」 ミナコ「だけど、ホントにありがとう、朝早く来てくれて。」 ヨシキ「私のかわいいミナコのためだもの。」 ミナコ「ごめんね。     待たせちゃったよね。」 ヨシキ「ううん。     私も今来たところ。」 ミナコ「ちょっと買い物に時間掛かっちゃって。」 ヨシキ「買い物?」 ミナコ「来る途中に、いい物売ってたんだ〜。」      ミナコ、紙袋を取り上げる。 ヨシキ「え?     何なに〜?」 ミナコ「じゃーん!     焼きたてのメロンパン!」 ヨシキ「又、ビミョーな物買って来たね。」 ミナコ「パン屋さんとこ通り掛かったら、すっごくいいにおいがしてて。」 ヨシキ「で、わざわざ買って来たわけ?」 ミナコ「珍しいな、と思って。     焼き立てがいいなって頼んだら、焼けるまで時間が掛かって。」 ヨシキ「人待たせてるのに。」 ミナコ「ヨシキも来たばかりって言ってたじゃない。」 ヨシキ「いや、あれは・・・」 ミナコ「ねーねー、一緒に食べよ。」 ヨシキ「いやー、ちょっと・・・」 ミナコ「え、きらいだっけ?     メロンパン。」 ヨシキ「実はダイエット中なんだよね・・・」 ミナコ「うそ!     ヨシキ、ダイエットなんか全然必要なさそうじゃない。」 ヨシキ「普段研究室にとじこもってるでしょ。」 ミナコ「あ、今何の研究やってるんだっけ?」 ヨシキ「当ててみて。」 ミナコ「えっと・・・     道に百円落ちてたのを発見したオスの反応の研究!」 ヨシキ「あのさあ・・・」 ミナコ「惜しくない?」 ヨシキ「なわけないでしょ!」 ミナコ「百円じゃなくて、エロ本が落ちてた!」 ヨシキ「アホか!」 ミナコ「あ、じゃあさ、女子高生のパンツが見えた!と思ったら、スパッツをはいてて、がっかりしたオスの反応の研究。」 ヨシキ「もういい!     オスの反応の研究ってとこしかあってないよ!」 ミナコ「惜しいじゃない。」 ヨシキ「惜しくない。     わたしゃ一体、どういう研究してるって言うのよ!」 ミナコ「ヨシキってそういう方面ばかり考えてそうだもんね。」 ヨシキ「そんな研究しても役に立たないでしょ!」 ミナコ「メダカのオスの研究より役に立ちそうじゃない。」 ヨシキ「もう。     わかっててボケるんだから・・・     ところで何の話だったっけ?」 ミナコ「ダイエット。」 ヨシキ「そうそう。     1日中研究室でメダカとにらめっこしてるじゃない。     運動不足もいいところでさ、ズボンとかきつくなった気するんだよね・・・」      ミナコ、ヨシキをジロジロ眺めている。 ヨシキ「何よ。」 ミナコ「どっちかと言えば、もうちょっと太った方がいいんじゃない?     特に胸とか。」 ヨシキ「こら!」 ミナコ「私は客観的に言っただけよ。」 ヨシキ「もっと腹が立つって言うの!」 ミナコ「何なら私のお肉あげよっか?」 ヨシキ「あんたも人にやったらなくなるでしょうが。」 ミナコ「いや、この辺りとか、どう?」 ヨシキ「いらないよ!     特に下半身はさ。」 ミナコ「ねえ、もしかして・・・」 ヨシキ「何ニヤニヤ笑ってるのよ。」 ミナコ「マツイ君がやせろ、って言うの?」 ヨシキ「誰よ、マツイって。」 ミナコ「マツイ君じゃなかったっけ、彼氏。」 ヨシキ「マツダだよ。」 ミナコ「あ、ごめーん。     名前も顔も似てるからさ。」 ヨシキ「誰に?」 ミナコ「ヤンキースのマツイ。」 ヨシキ「知らなーい。」 ミナコ「えー、有名だよ。     野球選手のマツイ。」 ヨシキ「だからホントに知らないんだって。」 ミナコ「そうなの?」 ヨシキ「そんなに似てるんだ。」 ミナコ「そっくりだよ。     はじめて見たとき、『あ、マツイ!』って思ったもん。」 ヨシキ「どんな人なの?」 ミナコ「野球の選手だって。」 ヨシキ「じゃなくて、見た目とか。」 ミナコ「顔はアンタの彼氏みたい。」 ヨシキ「それじゃわかんないよ。」 ミナコ「そっか〜。」 ヨシキ「だから、さっきからその笑いは何よ!」 ミナコ「この話は水に流して。」 ヨシキ「流さないでよ!」 ミナコ「まあまあ。     気にしない、気にしない。」 ヨシキ「気になるっつうの!」 ミナコ「メロンパン食べようよ。     ホラ、半分こ。」     ヨシキ「何で1個しか買わなかったのよ。」 ミナコ「分ければいいでしょ。     はい、あ〜ん。」      ミナコ、ヨシキに食べさせようとするが、引っ込める。 ヨシキ「ちょっと!」 ミナコ「ダイエット中なんだよね〜。」 ヨシキ「そのにおい、反則だよ〜。」 ミナコ「せっかく買って来てあげたのに、残念だな〜。」 ヨシキ「あ、お前、いきなり食うか!」 ミナコ「うわ、サイコー。     外はカリカリで、中はふんわり柔らかくてさ・・・」      ヨシキが欲しくなって差し出した手を、ミナコピシャリと叩いて ミナコ「ダーメ。」 ヨシキ「勘弁してよ。     私朝ごはん食べてないんだよ〜。」 ミナコ「食事を抜くとかえって太るんだぞ。」 ヨシキ「わかってるよ。」 ミナコ「学生はこれだから。     ちゃんと食事とってるの?」 ヨシキ「下宿生じゃないから。」 ミナコ「ママが作ってくれるか。」 ヨシキ「ミナコだって同じでしょ。」 ミナコ「話をこっちにふらないでよ。     ダメだよ、ちゃんと朝ごはん食べなきゃ。」 ヨシキ「何?     お説教?」 ミナコ「親友として、ヨシキの体の心配してあげてるんじゃない。」 ヨシキ「いつもはちゃんと食べてるよ。     だけど、けさはあんたが朝早くから呼び出すから。」 ミナコ「早い?     もう9時になるんだけど。」 ヨシキ「私毎日10時まで寝てるからね。」 ミナコ「はあ〜。     これだから学生はね〜。     寝過ぎでボケるわよ、あんた。」 ヨシキ「心配してくれないでも大丈夫だよ。     毎晩夜中まで起きてるから。 ミナコ「誰が心配するか!」 ヨシキ「実はきのうの夜もお酒飲んでて・・・」 ミナコ「誰と?」 ヨシキ「決まってるじゃない。」 ミナコ「2人で?」 ヨシキ「やーだ、もう。」 ミナコ「気色悪いよ。     マツイか・・・」 ヨシキ「マツダだって。」 ミナコ「ふんふん。     お酒飲んだ後は?」 ヨシキ「え〜。」 ミナコ「まあ、うれしそうなこと。」 ヨシキ「何言ってんのよ。」 ミナコ「もうネタはあがってんだからね。     お酒飲んだ後、どこか行ったの?」     正直に言わないとメロンパンあげないよ。」 ヨシキ「そんなこと、言えないよ〜。     やだ、もう、ホテルだなんて・・・」 ミナコ「言ってるじゃない!     で、何時に帰ったのよ。」 ヨシキ「エヘ。     さっき帰ったばっかり。     直行でここに来た。」 ミナコ「さすが、マツイだね。」 ヨシキ「意味わかんないよ。     マツダだし。」 ミナコ「あんたとこの親、怒らないの?」 ヨシキ「だってもういい歳だし。」 ミナコ「うちなんか、いまだに門限があるんだよ。」 ヨシキ「ウソ。」 ミナコ「ホント。     しかも10時。」 ヨシキ「飲みに行けないじゃない!」 ミナコ「10時過ぎたら母さんが鬼みたいな顔して玄関に立ってるんだ。     それで遅くなったら、往復ビンタだよ。」 ヨシキ「へえ〜。     会社で飲み会とかあるんじゃないの?」 ミナコ「だから、一次会終わったらソッコーで帰る。」 ヨシキ「ミナコがそんな箱入り娘とは知らなかったな。」 ミナコ「知らなかった?     箱入りリボンつきだよ〜ん。」 ヨシキ「ねえ、メロンパン。」 ミナコ「欲しい?」 ヨシキ「何もったいつけてんのよ。」 ミナコ「食べたら、私のお願い聞いてよね。」 ヨシキ「そう来たか。     一体何よ、お願いって。」 ミナコ「食べてからでいいよ。」 ヨシキ「こんな朝早くから呼び出して、つまんないことだったら、私怒るよ。」 ミナコ「ちょっと説明と準備がいるかな?と思って。」 ヨシキ「面倒なことも嫌だからね。」 ミナコ「ま、まあ、食べて食べて。」 ヨシキ「何だか食べづらいなあ・・・」           ヨシキ、メロンパンを頬張るが、むせてしまう。 ミナコ「あ、ご、ごめん。     飲み物買って来るね。」      その場を離れようとするミナコを、ヨシキ呼び止める。 ヨシキ「ミナコ!     トマトジュースね。」      ミナコ退場。 ヨシキ「はあ〜。     寝不足とふつか酔いで頭が痛いよ・・・     よりによってこんな日に呼び出しやがって・・・」      ミナコ戻って来る。      ヨシキにトマトジュースを渡し、自分用の缶を開ける。 ヨシキ「ミナコさあ、その×××っておいしいの? ミナコ「どうして?」 ヨシキ「それを朝から飲む人の心境がわからない。」 ミナコ「私からすれば、トマトジュースの方がどうかと思う。」 ヨシキ「悪かったわね。     私、頭が痛いんだから。」 ミナコ「あ、ごめん。     寝不足・・・     なんだよね。」 ヨシキ「慣れてるから、いいけどさ・・・     (トマトジュースを飲んで)ふわー、生き返ったあ!」 ミナコ「それにお疲れなんでしょ、きのう。」 ヨシキ「あんた、何か変なこと考えてない?」 ミナコ「うん。」 ヨシキ「ちょっと待ってよ。」 ミナコ「だってマツイ君と。 ヨシキ「だからマツダだって。」 ミナコ「パワーありそうだよね。」 ヨシキ「私がそんな女に見える?」 ミナコ「見える。」 ヨシキ「せっかく、お願い聞いてあげようと思ったのになー。」 ミナコ「あ、ごめん。     冗談だよ冗談。」 ヨシキ「全くもう。     あんたもいい歳なんだから、彼氏の1人や2人・・・」 ミナコ「2人はいらないでしょ。」 ヨシキ「ぎく。」 ミナコ「えっ?」 ヨシキ「いや、何でもない。」 ミナコ「ねえ、覚えてる?     メロンパン。」 ヨシキ「え?」 ミナコ「私が中学で転校して来た時だよ。」      回想シーンに変わる。      中1のクラス。      1時間目の体育の授業前。      女子たちが教室で着替えようとしている。 ミナコ「あ、あの・・・     教室で着替えるんですか?」  声A「そうだよ。」  声B「だって更衣室遠いから。」  声C「早くしないと体育に遅れちゃうよ。」 ミナコ「僕やっぱり更衣室に行って来ます。」      ミナコ退場する。  声A「何あの子。」  声B「西山さんって変よね。」  声C「女なのに、僕、なんて言うし。」  声A「きっとさ、ここが田舎だからバカにしてるのよ。」  声B「ねえ、みんな。     女子はあの子無視することにしない?」  声C「あ、それいいね。」  声A「じゃあ、話しちゃダメだよ。」  声B「みんな、いい?     あの子としゃべったら、今度はその子が無視だからね。」      そこへ遅刻して来たヨシキが入って来る。 ヨシキ「おはよー。     又遅刻しちゃったよ。」  声C「あ、ヨシキ、あのね・・・」  声A「話はあとあと。       もう授業に遅れちゃう。」  声B「ヨシキも早く着替えなきゃ。」 ヨシキ「ヤバッ。     1時間目体育か・・・」      その日の昼休み ヨシキ「ねえねえ。     みんな西山さんとお弁当食べようよ。」      周りの反応はない。 ヨシキ「西山さん。     一緒に食べよ。」 ミナコ「は、はい。」 ヨシキ「あの、私、川村良樹。」 ミナコ「ぼ、僕は西山美女子です。」 ヨシキ「知ってるよ。     ビジョコって書くんだよね。」 ミナコ「変な名前ですよね。」 ヨシキ「そんなことないよ。     すごいじゃん。      美しい女の子だもん。     私なんか男みたいな名前だから、よく間違われるんだ。」 ミナコ「あ、あの、これ・・・」 ヨシキ「西山さん、お昼はパンなんだ。」 ミナコ「半分どうですか?     すごくおいしいんです、このメロンパン。」 ヨシキ「いいの?     ありがとう。     じゃあ、私のお弁当も分けてあげるね。」      回想終わる。      ヨシキ「あー、そんなこともあったっけ?」 ミナコ「私、あの時転校したばかりで、みんなに無視されてて・・・     だからヨシキだけが話してくれて、すっごくうれしかったんだ。」 ヨシキ「あー、あれね・・・」 ミナコ「ホント、感謝してます。     ヨシキがいなかったら、私・・・     学校行けなくなったかも知れない。     だから、メロンパンは私たちの友情のあかしなんだわ!」      ミナコ、自分の言葉に酔っている。      ヨシキ「あのー、お取り込み中の所申し訳ないんですけど。」 ミナコ「もう!     せっかくいいセリフなのに・・・」 ヨシキ「あれ、違うんだよね。」 ミナコ「えっ?」 ヨシキ「私あの時遅刻して、みんながミナコを無視することにしたの知らなかっただけなんだ。」 ミナコ「じゃあ、知ってたら?」 ヨシキ「ぶっちゃけ、真っ先にその話にのってたと思う。     私、ああいうの、すぐのる方だから。     なんで、みんなあんたのこと無視ってんのかなあ?     って思いながら、まあいいやって、話し掛けただけなんだよね。」 ミナコ「今ようやく明かされた、衝撃の事実だわ・・・」 ヨシキ「だってミナコ、女のくせに、僕は、なんてしゃべってたし。」 ミナコ「あれ、前の学校ではやってたのよ。」 ヨシキ「私だって、正直な所、変な子って思ってたからね。」 ミナコ「ま、まあ、いいか。     あれでヨシキと仲良くなれたんだし。」 ヨシキ「そうそう。」 ミナコ「そうとわかったら、こんなメロンパンなんか・・・」 ヨシキ「ちょっとダメだよ。     食べ物を粗末にしちゃ。」 ミナコ「一気食いしてやる!」 ヨシキ「そっちかよ!」      ミナコ、コッペパンを一度に口に入れてむせる。      ヨシキ、ミナコの背中をさすってやる。 ミナコ「はあ、はあ・・・」 ヨシキ「大丈夫?」 ミナコ「これで気持ちの整理がついたわ。」 ヨシキ「それは良かった。」 ミナコ「ところで、お願いのことなんだけど。」 ヨシキ「何だか、断りにくくなっちゃったな・・・」 ミナコ「ちょっと、いや、かなり言いづらいのよね・・・」      口を開くのをためらっているミナコ。      間。      ヨシキ、いたたまれなくなって口を開く。 ヨシキ「あ、もしかして・・・     私、彼氏が欲しいの!     なーんちゃって、ハハハ。     ごめん。     そんなわけないか。」 ミナコ「近い。」 ヨシキ「え、何?     冗談で言ったのに、もしかしてビンゴ?」 ミナコ「あ、いや、あの・・・」 ヨシキ「なーんだ。     彼氏いない歴25年のミナコも、ついに目覚めたというわけだね〜     うんうん。」 ミナコ「あの、勝手に納得しないで欲しいんですけど。」 ヨシキ「え、違うの?」 ミナコ「違います。」 ヨシキ「じゃあ何、お願いって?     言っとくけど、私に難しいこと相談してもダメだからね。」 ミナコ「それはよくわかってる。」 ヨシキ「そんなアッサリ同意しないでよ。」 ミナコ「一応男女関係の相談なんだけど。」 ヨシキ「じゃあ、聞いてあげるよ。」 ミナコ「・・・うーん、やっぱり言いにくいのよね・・・」 ヨシキ「もう、早く言ってよ。     私疲れてるんだから。」 ミナコ「やっぱりそうか。」 ヨシキ「何が!」 ミナコ「ごめん、気にしないで。     それで話を聞いてもらってから、ヨシキに少しやってもらいたいことがあるんだけど。」 ヨシキ「私今晩予定があるんだけどな。」 ミナコ「大丈夫、すぐ終わるから。」 ヨシキ「なら、いいけど。」 ミナコ「お昼の2時頃には終わるよ。」 ヨシキ「えーっ!?     そんなに掛かるの?」 ミナコ「う、うん。     ヨシキさえ良ければ・・・」 ヨシキ「あのさあ、良いも悪いもハッキリ言ってくれないと答えられないんだけど。」 ミナコ「そ、そうだよね。」 ヨシキ「それに、今夜に備えて準備ってものもあるんだから。」 ミナコ「準備?」 ヨシキ「そりゃまあ、お化粧とか、着てく服とか・・・」 ミナコ「今日もマツイ君と会うの?」 ヨシキ「マツダだって!」 ミナコ「ごめん。     そんなにラブラブなんだ・・・」 ヨシキ「あー、いやいや、違う相手だけど。」 ミナコ「彼氏がいるのに?」 ヨシキ「いや、あいつ彼氏ってわけじゃないし・・・」 ミナコ「マツダ君?」 ヨシキ「ま、ま、私のことはどうだっていいでしょ。」 ミナコ「全くもう・・・」 ヨシキ「とにかく、早く用件言ってよ。」 ミナコ「わかった。     えっと、悪いんだけど、まず事情を説明させて欲しいのよね。」 ヨシキ「事情?」 ミナコ「うん。     たぶんいきなりお願いしても、ヨシキびっくりすると思うんだ。」 ヨシキ「男女関係で?」 ミナコ「とにかく聞いてくれる?」 ヨシキ「まあ、他ならぬミナコの頼みじゃ仕方ないよなあ・・・」 ミナコ「ヨシキ、うちの父さんに会ったことないよね?」 ヨシキ「お父さん?     そうだね。」 ミナコ「海上自衛隊だから、船に乗っててほとんど家にいないから。」 ヨシキ「それがどうかしたの?」 ミナコ「うちの父さん、すっごい頭の古い人でさ。」 ヨシキ「あー、お母さんもそんな感じだよね。」 ミナコ「母さんどころじゃないんだって。     気に入らないことがあるとすぐ手が出るし。     まるで星一徹みたいなの。」 ヨシキ「イマドキ星一徹は貴重だね。     天然記念物に指定して保存しなきゃ。」 ミナコ「家族はいい迷惑なんだから。」 ヨシキ「そうだよね。」 ミナコ「たまに家に帰って来たら、腫れ物に触るみたいな感じで。」 ヨシキ「いつ、ちゃぶ台をひっくり返すかと。」 ミナコ「いや、ちゃぶ台なんかないんだけどね。     で、うちの妹がいるじゃない。」 ヨシキ「ああ、カヨコちゃん。」 ミナコ「こいつが、姉の私を差し置いて彼氏なんか作っちゃって。」 ヨシキ「いや、あんたが普通じゃないんだって。」 ミナコ「・・・ま、まあ、いいよ。     それでね・・・」 ヨシキ「お父さん、それが気に入らないんだ。」 ミナコ「そうじゃないのよ。     むしろ女は早く結婚して家を出て行け、という考えの人だから。」 ヨシキ「じゃあ何が問題なの?」 ミナコ「カヨコが結婚したいと言い出して。」 ヨシキ「へえ、早いね。     ミナコより2つ下だっけ?」 ミナコ「いや3つ下。     就職してすぐ職場で知り合ったんだって。」 ヨシキ「いや、でも、それはおめでたいことでしょ。」 ミナコ「ところがそうでもないのよ。     父さんが大反対で。」 ヨシキ「言ってることと話が違うじゃない。」 ミナコ「でしょー。」 ヨシキ「何で?     カヨコちゃんって、結構いい所に就職してなかった?」 ミナコ「う、うん。     相手は何の問題もないのよ。     むしろあの子にはもったいないくらいで。     会ってみたけど、すごく感じが良くてイケメンだしね・・・」 ヨシキ「何だ。     ミナコ、カヨコちゃんにやいてるの?」 ミナコ「違うわよ。     私が男の人に興味がないこと、よく知ってるでしょ。」 ヨシキ「それはないでしょ。     ミソジ近くにもなって・・・」 ミナコ「誰がミソジよ!」 ヨシキ「あんた25でしょ。     四捨五入すればミソジだよ。」 ミナコ「四捨五入しないでよ!     同級生のくせに・・・」 ヨシキ「私はまだ24だから。」 ミナコ「ま、まあ、とにかく、私、ホンットーに男性に興味はないんだから。」 ヨシキ「はいはい。     そういうことにしておこう。」 ミナコ「父さんが反対してるの、私のせいなんだ。」 ヨシキ「はあ?     全然意味わかんないんだけど。」 ミナコ「姉より先に妹が結婚するのは許さん!って言うのよ。」 ヨシキ「信じられない。     それじゃカヨコちゃん一生結婚出来ないかも知れないよ。」 ミナコ「でしょ。」 ヨシキ「いきなりミナコに結婚しろと言っても無理だよね。」 ミナコ「だけど、何しろ父さん星一徹だから言い出すと聞かなくて、カヨコも母さんも困ってんのよ。」    ヨシキ「仕方ない。     ミナコ、このさいだから結婚しなよ、カヨコちゃんのために。」 ミナコ「そんなの不可能でしょ!     そもそも私結婚する気ゼロなわけだし。」    ヨシキ「そうだよね。」 ミナコ「父さんもさすがにすぐ結婚するのは無理ってわかってくれたんだけどね・・・」 ヨシキ「それで?」 ミナコ「お見合いしろって言うのよ。     それがカヨコの結婚を許す条件だって。」 ヨシキ「なんだ。     見合いくらい、すればいいじゃない。」 ミナコ「冗談じゃないわよ!     全く結婚する気がないのにお見合いするなんて、相手にも失礼だし。」 ヨシキ「別にそんなのよくある話だよ。」 ミナコ「私は嫌なのよ。     男の人がそんな目で私を見るなんて、考えてだけで耐えられない。」 ヨシキ「何中学生みたいなこと言ってるの?     カヨコちゃんのためなんでしょ。     ちょっとだけ我慢して、後から適当に断りゃすむことじゃない。」 ミナコ「人ごとみたいに言わないでよ!」 ヨシキ「いや、ぶっちゃけ人ごとだから。」 ミナコ「相手まで決められててさ。     自衛隊の勤務医だって。」 ヨシキ「ちょっと待った。」 ミナコ「何よ。」 ヨシキ「今、勤務医って言った?     もしかしてお医者さん?」 ミナコ「うん。     医者だから普通の自衛官みたいに転勤もないし、条件がいいんだって。」 ヨシキ「それって、エリート中のエリートじゃない。     何でそんなオイシイ話が、男嫌いのあんたとこに来るのよ!」 ミナコ「そんな事言ったって、私結婚するつもりないし。」 ヨシキ「私に回してよ!」 ミナコ「ヨシキ彼氏がいるじゃない。」 ヨシキ「だから、彼氏ってわけじゃ・・・」 ミナコ「きのうホテルに行ったんでしょ?」 ヨシキ「だから、結婚となりゃ話は別だって。」 ミナコ「ひっどー。     マツイ君にチクってあげるんだから。」 ヨシキ「マツダだよ。     まあ、とにかく、私が代わりにお見合いしてあげるから、ねっ?」 ミナコ「あのさあ・・・     それじゃ何の解決にもならないんだけど。」 ヨシキ「そう?」 ミナコ「そうだよ!」 ヨシキ「それじゃ、私にどうしろと言うのよ。」 ミナコ「それなんだけどね・・・     実は母さんと相談して、父さんに、もう彼氏がいるから、と言っゃったのよね。」 ヨシキ「医者と見合いは?」 ミナコ「だから断るのよ。」 ヨシキ「おっしゃー!     その話、私に回して。」 ミナコ「いや、そうじゃなくて。」    ヨシキ「相手だってがっかりするでしょ。     私がかわりに会ってあげるから。ね?」 ミナコ「ま、まあ、その話は後にしようよ。     その前に私の頼みを聞いてくれない?」 ヨシキ「うん、わかった。」 ミナコ「お見合いの話は、後で父さんに言ってみるから。」 ヨシキ「頼んだわよ。」 ミナコ「結局問題は、彼氏をどうするか、ってことなのよね。」 ヨシキ「お父さん、家にいないんじゃないの?」 ミナコ「それがさ、わざわざ帰って来て、私の彼氏に会わせろって言うのよ。     挨拶しておかないといかん、とか言って。     でもはっきり言って、私がウソついてないかどうかの確認だよね。」 ヨシキ「へえ、そりゃ困ったね。     そこまでやるかなあ、普通。」 ミナコ「そこまでやる人なのよ!     だから困ってるわけ。」 ヨシキ「正直に言った方がいいんじゃない?」 ミナコ「あんたはうちの父さんを知らないから、そんなことが言えるのよ!     これでカヨコの縁談がうまくいかなくなったら、私あの子に一生恨まれるわ。」 ヨシキ「そうかあ・・・     で、お父さんが帰って来るのはいつ?」 ミナコ「今日のお昼。」 ヨシキ「今日?!     そんないきなり・・・」 ミナコ「言ったでしょ。     父さん、言い出したら聞かない人だって。」 ヨシキ「いやでも、相手の都合ってものもあるでしょ。」 ミナコ「それが、相手は学生だって、言っちゃってて・・・」 ヨシキ「何でそうなるの!」 ミナコ「いや、どういう男かって聞かれて、とりあえず思いつきを答えちゃったのよ。     だから、結婚の話は彼が卒業して就職してからだって。」 ヨシキ「う〜ん。     それはうまいこと言ったんだか、墓穴を掘ったんだか、わからないね・・・」 ミナコ「それで急いでヨシキに電話して来てもらったのよ。     お願い!     助けてよ。」 ヨシキ「一体、どうすればいいの? ミナコ「父さんに会って、私と付き合ってるんだって、納得させてくれればいいのよ。     父さんの許しが出たら、カヨコ、ソッコ−で結納する手はずになってるから。」 ヨシキ「そりゃ又手回しのいい・・・」 ミナコ「でしょ。     だから今日1日だけ父さんをだませれば・・・」 ヨシキ「つまり、あんたの彼氏のふりをしてくれる男の人を探せばいいわけね。」 ミナコ「そこをヨシキにお願いしたいわけ。」 ヨシキ「なるほどね。     確かに私のまわりは学生がいっぱいいるしね。     だけど、あんた男の友達くらいいないの?」 ミナコ「そんなことを頼める人はいないわよ。」 ヨシキ「例えば、ほら、ヨシダ君とか面白がってやってくれそうじゃない?     まだ学生だし。」 ミナコ「それは困るの。」 ヨシキ「何で?」 ミナコ「万が一にでもその気になられたら嫌だもの。」 ヨシキ「ひどいな、それ。     あの人、あんたと仲良かったじゃない?     もしかしたらミナコに気があるのかも知れないよ?」 ミナコ「だからますます嫌なの。     とにかく私男の人とそういう関係になる気はないんだから。」     ヨシキ「何で?     フリするだけなのに・・・」 ミナコ「フリだろうが何だろうが、嫌なものは嫌。     生理的に受け入れられないのよ、私。」 ヨシキ「困った子だね・・・     あれ?     じゃあ、どうしようもないんじゃない?     何なら、マツダ君貸してあげてもいいかな、と思ってたんだけど。」 ミナコ「だから悪いけどヨシキにお願いしたいのよ。」 ヨシキ「でも男はダメなんでしょ?」 ミナコ「だからさっきからお願いしてるじゃない、ヨシキに。」      ヨシキ、ハッと気付いて飛びのき、ミナコから離れる。 ヨシキ「え〜!?」 ミナコ「お願〜い。」 ヨシキ「気色悪い声出すな!」 ミナコ「男になってよ〜。」 ヨシキ「そりゃ無理だよ。」 ミナコ「ヨシキなら出来るって。」    ヨシキ「出来ないって!     ・・・第一、ついてないし・・・」 ミナコ「大丈夫だよ。     父さん、そこまで見やしないから。」 ヨシキ「てか、そんなのすぐバレるでしょ。」 ミナコ「ヨシキ、高校のとき演劇部だったじゃない。」 ヨシキ「それがどうした。」 ミナコ「よく男役やってたし。」 ヨシキ「いや、あれはみんな女とわかって見ているわけで・・・」 ミナコ「一時しのぎでいいんだからさあ。」 ヨシキ「無理無理。     他の人を当たってよ。」 ミナコ「ヨシキしかいないのよ。     こんなこと頼めるのは。」 ヨシキ「悪いけど、帰らせてもらうわ。」 ミナコ「私に、お医者さんと見合いしろって言うの?」      立ち去ろうとしていたヨシキ、振り向いて ヨシキ「医者かあ・・・」 ミナコ「せっかく後でヨシキに回してあげようかと思ったのになあ・・・」 ヨシキ「そ、そうだ!     他に男役が出来そうな女友達を捜してあげるよ。」 ミナコ「もういいよ。     私、我慢して見合いするから。」 ヨシキ「そんな我慢なんかしないでいいから。     あ、そうそう。     マナなんかどう?     あの子ガサツだし、声も低いから男に見えない?」 ミナコ「マナはダメだよ。」 ヨシキ「どうして?」 ミナコ「だって、胸が大きいもの。」 ヨシキ「はあ、そうですか・・・」 ミナコ「だからヨシキがいいんだけどなあ・・・」 ヨシキ「あのさ。」 ミナコ「え、何? ヨシキ「それ、スッゲー傷つくんだけど。」 ミナコ「そう?」 ヨシキ「・・・もう、いいよ。     やっぱり帰らせてもらうわ。」 ミナコ「胸なんか、いらないよ!」 ヨシキ「えっ?」 ミナコ「私さ、こんな胸なんか、なければいいのにって思うんだ。」 ヨシキ「いや、そこまで大きくはないでしょ、ミナコは。」 ミナコ「でも、嫌なのよ!」     何で?     何で、こんな胸なんかさ・・・」 ヨシキ「ミナコ・・・     何言ってるの?」 ミナコ「なーんちゃって。     ごめんね、冗談だよ。」 ヨシキ「本当に?     冗談?・・・」 ミナコ「冗談だって!」 ヨシキ「前にもそんなこと、言ってなかった?」 ミナコ「そう?」 ヨシキ「うん。     確か高校の頃だよ。     体育で着替えてる時に、胸があるのが嫌でたまらないとか、取ってしまいたい、とか・・・」 ミナコ「私変わってるから。     気にしないでもいいよ。」 ヨシキ「あの時は、本当に冗談で言ってるのかと思ったんだけど。」 ミナコ「いや、だからあれも冗談だよ。     ヨシキをからかってやろと思ったの!」 ヨシキ「うん。     確かにあの時は私に対するあてつけなのかなと思って。     何でそんなこと言うんだろうって、不思議だったよ。」 ミナコ「だから今のも冗談だから、聞き流してくれればいいんだよ。     私もう諦めてお見合いするから。」 ヨシキ「ミナコ・・・」 ミナコ「ごめんね。     本当につまらないことで呼び出しちゃって。」 ヨシキ「何か隠してるよね?」 ミナコ「そんなことないよ。」 ヨシキ「私たち親友だよね?」 ミナコ「・・・どうだか。」 ヨシキ「どうしてそんなこと言うの?」 ミナコ「結局ヨシキだって始めから私のこと、変な子だなと思ってたんじゃない。」 ヨシキ「始めは確かにそうだったけどさ・・・」 ミナコ「だったら、もういいでしょ。     放っといてよ!」      ミナコ、ヨシキをさけようとする。      長い間。      ヨシキが口を開く。 ヨシキ「あのさあ・・・」 ミナコ「まだいたの?」 ヨシキ「ミナコっウソつくの下手だね。     昔からそうだよ。     嫌なことがあっても強がり言って絶対認めようとしないんだ。     だけど、すぐわかるんだよね。」 ミナコ「どうせ私は変な子だから・・・     バカーッ!」      自分自身にいらだって叫ぶミナコ。      ヨシキは目をそらさずじっと見ている。      ミナコはゆっくりヨシキと目線を合わせる。 ヨシキ「落ち着いた?」 ミナコ「うん。     ありがとう。」 ヨシキ「ねえ、話してくれない?     本当のこと。」 ミナコ「・・・じゃあさ、少しだけ話を聞いてくれる?     それからヨシキの意見を聞きたいんだ。」 ヨシキ「うん。」 ミナコ「始めに言っとくけど、これ私の話じゃないから。     勘違いしないでよね。」 ヨシキ「わかった。」 ミナコ「私こちらに越して来た時、近所にいとこのお兄さんが住んでて。」 ヨシキ「え?     何で急にそんな話・・・」 ミナコ「いいから聞いてよ。」 ヨシキ「ごめん。」 ミナコ「その人、結構かっこいい人で、ジャニーズの人みたいだった。」 ヨシキ「何かあったの、その人と?」 ミナコ「いや、話をしたこともないんだけど。     それに私男の人に興味ないし。」 ヨシキ「そうだよね。」 ミナコ「でも、何だか芸能人みたいな人だなあ、と思ってたの。     だけど、私が高校に入った頃、そのお兄さん女になっちゃったんだ。」 ヨシキ「えーっ!?     何それ?」 ミナコ「ビックリするよね。」 ヨシキ「あ、お兄さんと思ってたけど、実はお姉さんだったとか。」 ミナコ「そうじゃないの。     性転換手術っての受けたんだって。」 ヨシキ「へえ〜。」 ミナコ「性同一性障害って知ってる?」 ヨシキ「聞いたことはあるけど・・・」 ミナコ「心は女なのに、身体は男っていうやつ。     お兄さん、それだったんだって、母さんが言ってた。」 ヨシキ「本当にいるんだね、そういう人。」 ミナコ「ところがその家のお父さんが古い人で、お兄さんがカミングアウトしても相手にしてくれなくて。」 ヨシキ「あー、そうかも知れないね。     うちの父さんもたぶんそんな感じ。」 ミナコ「で、無断で手術したもんだから、お父さんがかんかんに怒っちゃって。     お兄さん1人息子だったし。」 ヨシキ「そりゃあ、古い人なら怒りそうだね。」 ミナコ「それで、勘当って言うの?     家を追い出されたらしいの。」 ヨシキ「ふうん。」 ミナコ「ヨシキはどう思う?」 ヨシキ「どうって・・・     何を?」 ミナコ「性同一性障害について。」 ヨシキ「・・・勘当までしなくてもいいと思うけど。」 ミナコ「じゃなくて・・・     例えば、友達にカミングアウトされたらどう思う?」 ヨシキ「友達って・・・     まさか・・・」 ミナコ「私じゃないって言ったでしょ!     例えばマツダ君が、実は女なんだって言って来たら?」 ヨシキ「それは困る。」 ミナコ「どうして?」 ヨシキ「女同士になっちゃうし・・・     私そういう人じゃないから。」 ミナコ「じゃ、じゃあさ・・・     もしも相手が女の子だったら?」 ヨシキ「ミナコ?・・・」 ミナコ「仲のいい友達が、実は男なんだ、手術して体も男になるんだって言って来たら?     ヨシキは愛することが出来る?     その子のこと。」 ヨシキ「・・・あんた、そんなことずっと考えてたの?」 ミナコ「ヤだなあ。     私じゃないって言ってるじゃない!」 ヨシキ「ごめん。」 ミナコ「謝らないでよ!」 ヨシキ「ミナコ?」 ミナコ「そして、その子がさ、実はずっとヨシキのことを好きで、だけど言い出す勇気がなくて、死ぬほど悩んでいたとしたら?     答えてよ、ヨシキ。」 ヨシキ「・・・わからないよ・・・     だけど・・・」 ミナコ「だけど?」 ヨシキ「男に見えるかな?     私。」 ミナコ「えっ?」 ヨシキ「ミナコにお見合いはさせない。」 ミナコ「ヨシキ!」      今朝会った時のようにきつく抱きしめ合う2人。 ヨシキ「ミナコ。     泣いちゃダメだよ。 ミナコ「だって・・・」 ヨシキ「男の方が泣いちゃサマにならないでしょ。」 ミナコ「うん。」      間。 ミナコ「なーんちゃって。」 ヨシキ「えっ?」 ミナコ「もしかして、信じた?     今の作り話。」 ヨシキ「作り話?」 ミナコ「そうだよ。     だって・・・     そんなわけないじゃん。     ヨシキをからかってみただけだよ。」 ヨシキ「ミナコ・・・」 ミナコ「ヤだなあ。     ホント全部作り話なんだって。     だから、そんな真面目な顔しないでよ。」 ヨシキ「そ、そうだったんだ。     なーんだ、ビックリしたあ。」 ミナコ「それより、早く男の演技してみてよ。」 ヨシキ「えっ?」 ミナコ「お父さん騙してくれるんでしょ。」 ヨシキ「そうだった。     ど、どうしよう?・・・」 ミナコ「だいじょーぶだよ。」 ヨシキ「どうして?」 ミナコ「何だか薄汚いズボンはいてるし。」 ヨシキ「はあ?」 ミナコ「胸もペッタンコだしね。」 ヨシキ「ミナコ。」 ミナコ「何?」 ヨシキ「コラーッ!」      ふざけてミナコに殴りかかろうとするヨシキ。      ミナコは嬉しそうに逃げる。 ヨシキ「ミナコ!お前、手術したらそのムネ私に寄越すんだぞ!」 ミナコ「わかったー。」 ヨシキ「何かさー。     これって男と女逆じゃねーの?」 ミナコ「今日だけはねー。」      〜おしまい〜