15分1人芝居「告白」 中島清志 作   【登場人物】♀1人        ♀ ナツキ・・・(高校3年生)                   高校の使われていない壊れたプールの裏である。      ナツキがやって来る。      同級生の男子を待たせていた様子。 「たっちゃん、ごめ〜ん、待った〜?  って待ったよね?  約束の時間10分も過ぎちゃってるし。  え?  20分は待ったって?  何で、そんな早くから来てたの?・・・  あ、ごめん。  僕、自分から誘っといてヒドイこと言っちゃってるね。  たっちゃんが、わざわざ早く来てくれたのに・・・  うん、嬉しいよ。  あ、でさ、遅刻の言い訳なんだけど、終礼中にケイタイ鳴っちゃってさ・・・  え?  うちのクラスおかしいんだって。  担任があれじゃん。  『受験生は余計なものを持ってくるな!』とか言って、ケイタイの持ち込み禁止なんだよ。  うちのクラスだけ。  も最悪。  受験生だからケイタイが必要なのにね・・・  いや、帰りに塾行って遅くなる日があるじゃん。  まあ、たっちゃんとかまーくんとか、いつも一緒だからいいんだけどさ。  実はそれが一番危なかったりして・・・  ははは、冗談だよ、冗談・・・  え、何?・・・  たっちゃんがメールくれたのお?  お前かー!  犯人は。  いや、すぐ没収されたから見てないよ。  変なメールじゃないだろうね?  え?  4時にプールの裏って、確認を送ったって?  あっちゃー。  それ何か誤解されそうだよ。  ほら(周囲を見回して)  ここって誰も来ない場所だし・・・(しゃがんでタバコの吸い殻を拾う)  不良がタバコ吸う所だもんね・・・(吸い殻を捨てる)  あの先生、「これは誰からだ?」って聞きそうだもんね。  そ。  嫌なやつなんだから。  まあたっちゃんと待ち合わせして、タバコを吸う約束だなんて思わないだろうけど・・・  あ、もしかして、たっちゃんも誤解しちゃったかな?  こう、あらたまって、2人だけで話がある、なんて言っちゃって。  塾の帰りだと他の子もいるから、2人切りになれる場所って考えたら、こんな所になっちゃったんだ。」      間 「あ、あの・・・  僕たちって、昔から仲いいよね。  家も近いし・・・  てゆーか、僕が小学校の時転校して来てさ、みんなにいじめられてたの、たっちゃんがかばってくれたんだよね。  あれ、すっごく嬉しくってさ・・・」      間 「あー・・・  思い切って聞いてみるんだけど・・・  たっちゃん、僕のこと好きでしょ?・・・  いや、幼なじみの、ただの友だちとしてじゃなくて・・・  ホントのこと言って欲しいんだけど。  その方が話が早いから。  それに、ぶっちゃけ僕もたっちゃんのこと好きだし・・・  うん。  幼なじみとして以上にだよ。  みんなだって、そういう風に見てると思うんだ。  ははは。  あれ、何だかアッサリコクッちゃった?僕。  だから、たっちゃんもホントの気持ち聞かせて欲しいんだ。  お願いだよ・・・  うん。  ありがとう。  良かった。  たっちゃんも僕と同じ気持ちだってわかってさ。  でね、これからも同じように付き合って欲しいんだけど、いいよね?」      ナツキ、少し引いている。 「ご、ごめんね。  ちょっと待って。  あ、いや、嫌じゃないんだよ、キスくらいさ・・・  だけど・・・  とっても嬉しいんだけどさ・・・  い、今は、まだ、ちょっと・・・  ごめん。  僕、何言ってんだか、わかんなくなってるね。」      間 「今日わざわざ呼び出して来てもらったのはさ、どうしてもたっちゃんに言っておきたいことがあって・・・  あ、好きだってことじゃなくて・・・  いや、きっとすっごくビックリすると思うんだ。  でね。  もしも、それを聞いた後でも、構わないって言うんだったらさ・・・  うん。  キスしよ。  してもいいよ。  あー・・・  何だかやたら恥ずかしくない?  何でこうなっちゃったんだろ?・・・  じゃ、じゃあさ、言うよ・・・」      ナツキ、耳打ちして重大な告白をしている。 「ね?  ビックリしたでしょ?  ウソじゃないよ。  証拠だってあるからさ。  あ、あの・・・  ここ触ってみてくれる?  うん。  構わないから。」      ナツキ、スカートの股間の部分を示している。   「あるでしょ?  わかった?  女の子は、こんなもの持ってるわけないよね。  僕さあ、転校して来る前はね、ずっと男の子だったんだ。  いや、今でもカラダは男の子なんだけどね。  ほら、胸だって全然ないし・・・  そこで笑うなよ!  もう・・・  それに・・・  余計なものついちゃってるし。  たっちゃん、性同一性障害って、知ってるよね?・・・  うん。  僕それなんだ。  だから、カラダは男の子でも、心の中は正真正銘女の子だよ。  気持ち悪いかな?  女の子なのに、ついててさ・・・  ごめん・・・  泣くつもりなんかなかったんだけど・・・  もう卒業だから・・・  たっちゃんにだけは、ホントのこと言っておきたくて・・・  今はまだわかんないけど、将来は手術して取っちゃうつもりだよ。  そしたらさ、ホルモンの具合がうまく行って、カラダの方も女の子になれるはずなんだ・・・  だけど、今は・・・  僕って、化け物みたいなもんだよね?  そうでしょ!  たっちゃん!・・・」      「たっちゃん」に引き寄せられるナツキ。      目を閉じて 「たっちゃん!?  ありがとう・・・」      〜おしまい〜